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ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜

by 蔵月古書店

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 小さな鈴の音が、小さな店の中に小さく響く。
 埃くさいのに、どこか心落ち着くような紙とインクのにおい。それは天井いっぱいまでの本棚にしまわれた本のにおい。
 狭い通路を挟むように、そして小さな店内いっぱいへと本棚は広がる。そのどれもに数多くの本がおさめられていた。
 その本を守るためだろうか。店内の明かりは弱々しい。ただ光は柔らかくもあり、静かに店全体へと広がっていた。

【蔵月古書店】

 その中に彼女は足を踏み入れたのだ。
 彼女は置かれた本を選びながら、ゆっくりと店内を回っていた。そして店内を一通りして気付く。
 さっき店の入口をくぐった時、小さな鈴の音が鳴った。それは来店を知らせるための鈴だったのだろう。
 しかし店員の姿が全く見えないのだ。
 鈴の音に気付かなかったのだろうか……
 彼女は会計カウンターに近付き、その奥に視線を向ける。そこには奥に続く入口が見えるのだが。
 奥へと呼び掛けるように声を出す。
「すいませ〜ん、誰かいらっしゃいませんか?」
 しかしその彼女の声に返事は無い。

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