[TOPへ]

ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜

by 蔵月古書店

前へ [19ページ] 次へ


 黒鵺の動き、それは人間の動きではなかった。街の中を駆け抜けていくその速さも人間離れしていれば、その跳躍力も普通ではない。たった一跳び、それだけで二階建ての屋根の上へと飛び乗ってしまう。そして屋根から屋根、屋上から屋上へ。その動きにはまるで重力などを感じさせない。
 それも彼女一人を抱きかかえているのにだ。
 ただただ彼女はその状況に声を失っていた。何が何だか全く分からない。その速さと高さに身を硬くする。
 黒鵺はと言うと、冷静に街の中を観察していた。
 そして異変に気付いていた。
 ……なぜ人がいない……
 そう黒鵺は心の中で呟いていたのだった。

前へ [19ページ] 次へ
※ 途中のページでケータイの「お気に入り」に登録すると、本にしおりをはさむように読んだページが保存できます。
Copyright 2006 (c) Assem-blage, Kirio Yamamoto, Bokuboku, and Kuratsuki-Koshoten
ここに掲載されている全ての文章および画像その他の著作権は、文章および画像その他の提供者にあります。
著作権は各国で制定されている著作権法により保護されており、許可無く転載・複製行為を行う事は禁止されています。