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ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜

by 蔵月古書店

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「無理じゃぞ。姿が見えぬ以上、黒鵺を鵺へと変身させる事は出来ぬ」
「でも……」
「沙夜子、お主が強大な力を持つなら、分断された空間を越えても可能じゃろう……しかし今のお主では……」
「それでもやります……だって早くしないと……黒鵺さんが……」
 その時、沙夜子の頭に浮かんだ映像。それは黒鵺が美女を抱え戦う姿だった。もちろんそんな沙夜子の頭の中までは分からないガァ子。
「そうか……確かに心配じゃな。あの娘もいる事だし」
 心配の方向性までは分からないのだった。
 沙夜子は大きく息を吸い、大きく吐く。そして。
 その唇が書かれた文章を追うのだった。その声が凛と響いていた。
 いつものどこか間延びした声とは全く違う。どこか透き通るように流れ出す。これが魔力、または霊力、などと言われる力を込めた言葉なのだ。


「……」
 キリが無い。
 黒鵺、そして彼女の周り。千切れ、切り裂かれた無数の根が山となる。どこかに本体がいる。ただそれを探す余裕が無い。
 全く力を持たない彼女を守りつつ、この場を切り抜けるのは難しい。
 せめて力が開放出来れば、一気に片付ける事が出来るのだが、遠野霊異記、そして沙夜子がいない今、それは不可能……のはずだった。

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