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ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜

by 蔵月古書店

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 青年は大きくため息を吐いた。
 そしてその場から離れる。
「片付けないんですか?」
「ああ、後でやる」
「あの……片付けるならお手伝いしますけど」
 優れた容貌とその無表情。それらが重なり、青年はどこか浮世離れした雰囲気を醸し出している。
 だからこそ放って置けない。一人にしたら、この店はもっと酷い状態になりそうだったから。
 だが彼女の言葉に首を横に振り、そして会計カウンターの中へと移動する。
「客にそこまでさせるわけにはいかない」
 青年はそうとだけ言って手を差し出す。彼女の持つ本の会計をするため。
 彼女もそれ以上強く手伝いを申し出るワケにもいかない。少なからず残念な気持ちを抱きつつ、その手に持つ本を青年へと渡す。
 そして青年は本をパラパラと捲った。前から後ろへ。後ろから前へ。さらに前から後ろへと。
「……」
 その様子を黙って彼女は見つめていた。もちろん彼女の頭の中にあるのは『何をやっているのだろう?』である。
 青年はさらにページをめくる。そして表紙、裏表紙、その折り返し部分をマジマジと見つめていた。
「あの……もしかして……」
「……」
「値段が分からないとか……ですか?」
「ああ」
 と青年は平然と答えた。
 あまりに平然としていたので、彼女はその様子に笑ってしまう。

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