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ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜

by 蔵月古書店

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 窓の向こうでは、しとしとと雨が降り続いていた。
 不規則な雨の音を聞きながら、黒鵺は一冊の本を開く。そこに書かれた漢字の羅列。日本では使われない漢字も並んでいる。書かれた文字は漢文。
 そしてその表紙には書かれたていたタイトルは『子不語』……それは約200年前、中国、清朝の時代、袁枚により書かれた書物である。そこには様々な怪談話が載せられていた。
 そして黒鵺はそのページで手を止めた。
 ……花魄(かはく)……
 それは子不語に記された木の精である。
 黒鵺の脳裏をよぎるのは、彼女の姿。あの希少本を売ってしまった彼女である。
 あの甘い花のにおい。それは彼女がつけた香水の類だったのだろうか。
 それとも、あのにおいこそが探しているモノに関係のあるものだとするのなら……

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