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ぶっくさーばんと! 〜花魄(かはく)〜

by 蔵月古書店

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 その時である。来客を告げる小さな鈴の音。
「……」
 こういう時に限って客が現れる。普段は一人も来ない日があるのに。
 もちろん黒鵺は店先に出る気は無かったのだが……
「あの、すいませ〜ん」
 その女の声に聞き覚えがあったのだ。
 黒鵺が店へと姿を現す。
 その黒鵺に対して軽く会釈をしたのは先日の彼女だった。黒鵺の接客した彼女。
「来てもらってすまないが、今日は本を売る事ができない」
「え?」
「俺が店先に出ると色々と失敗するからな」
 本棚全てを引っくり返す光景が思い出される。そして。
「あの……やっぱりコレのせいですか?」
 そう言って彼女は一冊の本を取り出す。
 それは先日、黒鵺が売った本。
「あの、これ希少本だったからもっと高いと思って……調べたらやっぱり定価の何倍もする本だったから……」
「ああ、そうみたいだな」
「今の私には少し高すぎる本ですし、お返ししようと思って」
 そう彼女の言葉に、黒鵺は首を横に振った。
「いやもう売ってしまったものだ。お前が持っていれば良い」
「でも……」
「本来、本な読むためのもの。沙夜子には悪いが、ここで眠らせておくより、誰かに読まれた方が良いだろう」

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